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さて話はガラッとかわりまして

オンラインゲームのプロジェクトに関わっていたころの話なので、たぶん2005年のことだったと思う。ゲームの開発はボストンのTurbineという会社がやっていた。そのゲームを日本語化して、こっちのデータセンターに置いたサーバ上で動かして日本のユーザに遊んでもらうというのが基本的なコンセプトだ。そのために仕様書をもらい、スペックを満たしたシステムを組んでいかねばならない。ある程度の自由は許容されているが、勝手をやってゲームのクオリティを下げるわけにはいかないのでエンジニアリングのチェックもあったりする。そういうわけでボストンへ出向いて打ち合わせもやるし、ボストンからエンジニアが来てこちらのシステムをチェックするということもあった。プロジェクトの間に、ボストンから日本へ、エクゼクティブも含めて10人ぐらい招いたと思う。

エクゼクティブはそれなりの接待を受けるが、エンジニアはエンジニア同士で、ということで、来日したTurbineのエンジニアの面倒は自分が見ることになった。当時は英語ができる社員があまりおらず、相対的に自分が、英語が得意な社員と見なされていた。これはまったく不合理な話だった。何しろ自分は高校生のとき、英語で留年しそうになったぐらい成績が悪かったのだ。そんな自分より英語ができないってどういうことだ? 全員留年したってことか? まったく不可解極まりない……。まあ実のところ、みんな英語で話をするのが恥ずかしいというだけのことなのは分かっていたので、それ以上は突っ込まなかったが。

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あるとき、ボストンから1人が先に来日し、もう1人が遅れてくることになった。そこで自分が車を出して遅れて来る人を迎えに行った。ついでということで先に来た1人を連れていき、空港で無事にピックアップして、雨の中を高速道路で戻った。先に来ていたエンジニアは、カタコトでない英語で話ができるのがうれしいのか、来る時とは打って変わって物凄い勢いでおしゃべりを始めた。なにしろ2人の女性の世間話なので自分には口を挟む余地がない。まあ自分はもともとそんなにおしゃべりではないので、2人が会話してくれているならそれでいいかと、1/5ぐらいの理解度で話を聞きながら運転していた。

ぼんやり車を進めていると、2人の話題が友達のボーイフレンドの話になった。なんかイイところに勤めているカッコいい男の子らしい。それを形容して、先に来ていた1人は「neat」だと言った。すると後から来たエンジニアがすかさず「The knights who say.」とまぜっかえした。自分はびっくりして、思わず2人の会話に割り込んだ。

「それって、ホーリーグレイルに出てくるオハナシだよねえ、モンティ・パイソンの」
「そうそう」
「あれって古いコメディでしょ。なんでそんなの知ってるの?」
「さあ、たしかケーブルテレビでやってたんじゃなかったかな」

そうかボストンではホーリーグレイルがケーブルテレビで見られるのか、うらやましい、と思ったものだった。ちなみに、neatと言った方はまったくリアクションがなかったので、面白くなかったか映画は見てなかったのだろう。


Monty Pythonはイギリスのコメディ番組から始まったグループで、第1シーズンが1969年、最後の第4シーズンが1974年というから本当に古い。その後映画も作られたりしているし、メンバーはソロでも活躍してはいるのだが、元ネタとしてのコメディ番組は45年前の話になる。それでもなお、英語圏では日常会話の端々にネタとして挙がってくる程度にはポピュラーなのだから驚きだ。ただ、「毎日しつこく届く広告メール」にspamという名前が付くのも、新しい言語に気の利いた名前を付けようと思ってPythonに決めてしまうのも、ことさらコンピュータ文化とMonty Pythonの親和性が高いから、という訳ではないような気がする。上述の通り、なんか知らんけどテレビで再放送してたからとか、そんな感じで世間に知られているのではないだろうか。

ちなみにPythonがどの程度Monty Pythonに傾倒しているかというと、まずFAQを見てみよう。

Why is it called Python?
When he began implementing Python, Guido van Rossum was also reading the published scripts from “Monty Python’s Flying Circus”, a BBC comedy series from the 1970s. Van Rossum thought he needed a name that was short, unique, and slightly mysterious, so he decided to call the language Python.
Do I have to like “Monty Python’s Flying Circus”?
No, but it helps. 🙂

https://docs.python.org/2/faq/general.html#why-is-it-called-python

次に同じdocページで、Quick searchで「spam and eggs」で検索してみよう。たくさんヒットするはずだ。

spam and eggsの検索結果

で、「knight」で引いてみるとこんな例題が出てくる。

Ni! Ni!

他にも、Cheese ShopとかDead Parrotなどの定番ネタが散りばめられていて、どうやら自分が初めてPythonを見た頃と、あんまり変わっていないようだった。

というわけなので、Pythonを使うに当たってMonty Pythonを好きになる必要はないが、好きになっとくといろいろ捗るようだ。