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プライベートオフィスを作ってみた

さて、先日オフィス縮退の話を書いた。

決定から片づけまでは短期間だったと書いたが、「縮退決定までのプロセス」には何か月もかかった。コロナ禍による緊急事態宣言、その前後の通勤禁止令と在宅勤務令は3月から4月の話であり、半年ほど前の話である。自分の業務スタイルも、オフィスに出社してみたり自宅で仕事をしてみたり試行錯誤をしながらだった。その間、いろいろなことを考えていた。在宅勤務中は悩みも多かったが、いつかは元に戻るのではないかという淡い期待もあったし、2年ほどはオフィスに戻れないんじゃないかという危惧もあった。

在宅勤務にはいいところもある。通勤しなくていい、より寝坊ができるなどの短絡的な利点がそうだ。一方で快適なオフィスで集中して仕事ができるとか、仲間と気軽におしゃべりできるというメリットを手放すことにもなる。これには同意する人としない人がいると思う。また、これ以外にも普段あまり話さない事柄がたくさんある。今回、タイトルの通りプライベートオフィスを作るに至ったのだが、その理由と共に経緯を説明していきたいと思う。

家庭の事情を踏まえた在宅勤務状況

さくらインターネットで仕事を始めた頃、正確にはその前身会社で仕事を始めた頃はまだ独身で、仕事とプライベートの境界は限りなく曖昧だった。オフィスは存在せず、自宅に専用線を引いて仕事をしていた。会社が会社の体を成し始めた時期になっても似たようなものだった。オフィスができて通勤するようになっても、自宅とオフィスの境界は曖昧なままだった。自宅でも必要があれば仕事をしていたし、割にその要求は大きかった。しかし結婚して家族ができると、そういう状況は一変した。特に子供が生まれると、家庭と職場は完全に区別するようになった。

自分はこれまで、仕事の話を家族とシェアすることはほとんどなかった。親には自分の仕事を説明したことがなかったし、結婚してからも妻にはほとんど何も説明していない。もちろん必要最低限のことは話すが、今どんなことをしているとか、今日どんなことがあったとか、会社でどんなポジションにいるかとか、どんなサービスを作っているかとかは、具体的には妻にも親にも説明したことがない。曖昧に「インターネットの仕事をしている」としか話していない。理由は一言では説明しづらいが、ようするに仕事を自宅に持ち込みたくないのだ。オフィスであれこれとストレスにさらされているので、自宅では別のことを考えたいとか、別のことをして気晴らしをしたいとか、まあそんな感じだ。

そういうわけだったのだが、突然在宅勤務を命じられ、家で仕事をするしかなくなってしまった。そしてすぐに問題が生じた。自宅でZoom会議をしなければならず、これが原因で仕事が家庭に侵入してきてしまったのだ。

Zoomの会議に子供が侵入してくるとかいうほのぼのした話とは関係がない。問題なのは、Zoom会議の内容を家族に聞かれることに対する個人的なストレスだった。とにかく自分は仕事を家庭に持ち込みたくないので、会議を家族に聞かれるのも好ましくないと感じてしまうのだ。特に「家族にとって意味不明なことばかり喋っているお父さんの図」を子供に見られるのは苦痛だった。まあ意図してそういう姿を見せることもあるが、在宅勤務で日常的にそれを見せるのは本当につらいことだった。

書斎とか個室が用意できれば解決できるかもしれなかった。だが4人家族が普通の住宅として買った家に、そんな贅沢な空間を確保するなんて不可能だ。あらかじめ計画してそういう住宅を選んだり建てたりしていればよい。しかし自分のように自宅で仕事をする気などない、ましてや会議などあり得ないと思っていたような人間にとっては、解決方法がまったくない。自分の人生設計では、家については夫婦のベッドルームとリビングのほかに、2人の子供のための個室で精いっぱいだ。あとは子供が独立したら部屋を取り返してのんびり考えようかと思っていた。どうせ大半の時間をオフィスで過ごすのだからと思っていたからだ。しかし事情は大きく変わってしまった。こうなると、この先何年も窮屈な自宅で仕事を続けなければならない。子供たちが中学・高校生になったら場所の取り合いになるのは目に見えている。

というわけで……

家族で引っ越すのも考えづらい。小学生の子供がいると引っ越しは選択肢に入らなくなる。転校とか、色々やりづらいからだ。となればいったいどうするか? 自分だけ外へ出てみるのはどうだろう。というわけでプライベートオフィスを作ってみようと考え、それを実行に移した。風の噂では、さくらは公共のオフィススペースに対してチケットを発行するような仕組みを検討中らしいが自分の好みにはまったく合わないので、ワンルームマンションを借りてそこを自分の書斎にすることにした。これならコロナ禍にも対応できるし、その他の問題も全部解決できそうだ。

本来はもうちょっと時間をかけて準備しようと思っていたのだが、オフィスの片付け期間が非常に短くなってしまったため、大急ぎで探して契約しなければならなくなった。オフィスにはダンボール10箱分の私物を溜め込んでいたので、これを受け取る前にプライベートオフィスを用意したかったのだ。物件はある程度あたりをつけていたのだが、かなり急いで内見・契約をする羽目になった。各方面にご協力をいただき契約書を用意して、最終期日に間に合わせることができた。これが10月2日のことだった。

さて最初に片付けたいのはインターネット接続だ。ここで失敗をしてしまったので特に記載しておきたい。どんな回線が引き込めるかはキャリアに対して事前に問い合わせをしておくべきということだ。NTTにしろKDDIにしろ契約前に調査は可能なので、住所とマンション・室名などと共に引っ越しを検討していると伝えた上で、希望の回線が引き込めるか否かを問い合わせた方がよい。自分の場合、上述の通り時間がなかったので契約後に問い合わせたのだが、期待の回線種別は引き込めないことが後で判明してしまった。幸い、比較的品質のよいケーブルテレビの回線を選ぶことができたので事なきを得た。なお仲介の不動産屋は、引き込んでいるキャリアがどこかは教えてくれるかもしれないが、回線種別までは分からないのであまりあてにしない方がよい。

10月17日には待望のインターネット回線が開通した。工事に来たのは気のいいお兄さんだった。グローバルIPアドレスのサービスを申し込んでおいたので、ついうっかり「ところで貰えるIPアドレスとか、説明書はないんですか? それともDHCPで自動付与ですか?」と聞いてしまったら「すみません、そういうことは全然分からないんです。サポートに電話してください」と返されてしまったりしてちょっと面白かった。なおIPアドレスはやっぱりDHCPだった。これをCentOS8で作ったPCルータで受けて、pingのテストをしていたらRTTがバラついて仕方がない。「なんかとっても回線が不安定ですねえ……」と言ったらお兄さんが「あっ、私も今pingのテストしています!」と、回線テストの邪魔をしてしまっていたのだった。やり直しさせてしまってすみません。

それからAmazonやニトリでどしどし必要なものを買い込み、ようやくオフィスっぽくなったのがこれである。

本棚には、元オフィスから持ってきた分しか入っていない。実は自宅にはダンボール30個分ぐらいの本が眠っていて、そのうちいくらかを持ち込めればなあと思っている。

さてこれから何をするか、だ。