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「学生時代にしか出来ないことをしてね」とは、本当は言いたくない

企業にいて面接官をやっていると、学生に対してこれに近いことを言う機会が結構ある。あるのだが、慌てて弁明させていただくと、当の学生から質問を受けるので仕方なく答えているのだ。その質問というのがこうだ。

「就職までにどんなことを勉強したらいいですか? あるいはどんなことをやっておくべきでしょうか?」

これに対して、自分はこんな風に答えるようにしている。

「就職すると、イヤでも会社の命令に従うことになるので、就職する前にそんなことを聞くのはやめた方がいいですよ。そんなことより、今やれることをやっといた方がいいです。ちゃんと勉強して、卒業してください」

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このような質問は以前から頻繁に受けていて、社内ではFAQになりつつある。とうとう、答えの方まで紋切り型になってきてしまい、「学生時代にしか出来ないことを」「今しか自由時間はない」「悔いが残らないように」みたいな答えを付け加えてくる面接官が現れるようになっている。自分は聞かれない限り答えない主義なので先回りはしないが、周囲の人は時々先に言ってしまうようになっている。今時の学生がこういうことを言われる機会が多いのは、これが理由だと思う。

だが、やっぱりこういうことは言うべきでないと、自分は強く思う。どう聞いてもお節介か、お説教にしか聞こえないからだ。

「学生時代にしか出来ないこと」をいう大人が多い理由は、就職の準備なんて不要という意味

どうしてこういうことを言う大人が多いかというと、建前はともかく、本音では「準備なんて不要」と思っているからだ。学生時代にあれこれ準備したことは、就職後に対して役に立っていないという経験があるのだ。さもなければ、もうちょっと実のあるアドバイスがあってもよいはずだ。

なので結局、自分が思うとおりに学生生活をエンジョイした方がいいというのが自分の結論だ。

そうはいっても卒業まで何をしたらいいか不安なんだけど?

就職が決まって卒業までの間の半年間、自分は何を考えていたのかというと「自分のプログラミング能力は職場で十分足りるだろうか?」という自問だった。どんな仕事を与えられるか分からないので、自分のスキルや知識が十分か、あるいは手に負えないようなことになったらどうなるかと不安だったのだ。しかし、かといって未来の上司に「どんなスキルを身に着けるべきですか?」と質問する気にはならなかった。何かが足りないと思えば、自分で見つけて身に着けるしかなく、それは他人から指摘を受けるようなものではないだろうなと考えていたからだ。

解決するべき問題や課題を、どうやって解決するか? 問題は、解かれればいいのであって、手段は問われないはずだ。もちろん一定の制約はあるが、その制約の中ではあらゆる自由があって、自分のどんな知識を使い、どんなスキルを駆使してもいいはずだ。問題を解くにあたって、使っていいのは○○という知識と××という能力だけね、というようなことはないはずだ。「それは中学生にならないと習わない漢字だから、小学生のうちは使っちゃだめ」というようなことは、社会では起こらないはずだ。だったら、どんなスキルを身に着けるべきか? という問いはあり得ない。自分の持っているスキルをどんな風に組み合わせるかというのは、結局自分で考えるしかない。

「どんな問題で悩んでいるのですか?」という問いならあり得るんじゃないかと思う。だが、就職前にそれは教えてもらえないんじゃなかろうか(想定質問に入れとこう)。

卒業までにやっておくべきことは、発想を広げ、瞬発力を高め、今そこにないものを与え、あるいは得ることを成すための準備だと思う。それは結局、自分らしくするということであって、会社のことなど考えずに学生生活を送ればいいということだ。

なので結局、自分が思うとおりに学生生活をエンジョイした方がいいというのが自分の結論だ。